「meet」は「対象との距離が縮まって接触する」という幅広い意味を持っています。
「meet」における人と人との接触は、対人関係上の接触を意味しています。
そのため一般的に「出会う」という使われ方をします。
しかし、人以外の接触を「meet」で言い表す場合、必ずしも出会うという意味にはなりません。
たとえば、抽象的な概念、それも目に見えないラインを意味する概念との接触に「meet」が使わることがあります。
その場合、何を意味するのか。
目に見えないラインとは何か。
We meet your wishes.
私たちはあなたの願いに対し距離を縮めて接触します。
願いというのはいわば相手が望んでいる目に見えないラインです。
提示されたあなたの願いというラインに対し、私たちは接触してみせますよってことを言ってるわけです。
まあ要は、あなたの願いに応えます、という意味です。
「respond」に近いニュアンスです。
Let us respond your needs.
[あなたの要求にお応えします]
目に見えないラインとは何か、ほかの例文でもう少し探ってみましょう。
The hotel didn't meet my expectations.
そのホテルは私の期待に対し距離を縮めて接触しなかった。
ホテルに期待するということは、そのホテルに対して求めているラインというか、レベルというか、そういうのがあるわけです。
わかりやすくその期待を数値化してみましょう。
0から100の期待値があったとして、そのホテルに対しては75という期待値を求めているとしましょう。
この75という期待値が目に見えないラインです。
さて、ホテルはその75という期待値に接触しているか否か。
今回の場合は「didn't meet」なので接触していないわけです。
つまり期待値まで届いていない、到達していない、という意味合いになります。
こういった目に見えない合格ラインに対して、接触しているか否かに「meet」が使わることがあります。
先程、この「meet」は「respond」に近いと言いましたが、実はそれは正しくありません。
正確に言うと、ここで使用される「meet」の根本的な意味は「満たす」です。
相手の願いや期待といったラインを「満たす」ことで、それらに「応える」わけです。
あるときは、日本語ではそれを「叶う」と表現することもあります。
満たすという意味の動詞は、他にも「satisfy」や「fulfill」などがあります。
I wonder if I alone can satisfy everyone's demands.
[私一人で皆の要求を満たすことができるだろうか]
They don't fulfill any of the criteria.
[彼らは何一つ基準を満たしていない]
目に見えないラインは、願いや期待の他にも、条件や要件といったものがあります。
この場合、ラインに届く、達するという「満たす」のニュアンスになることもあれば、そのラインにぴったりと適合するという「合う」というニュアンスを持つ場合もあります。
あうはあうでも「会う」じゃなく「合う」の方です。
「fit」のイメージに近いと言えるでしょう。
I have found a person who meets the requirements.
[条件を満たす人物を見つけました]
義務という単語もまた、目に見えないラインと言えるでしょう。
「するべきこと」あるいは「守るべきこと」というラインです。
このラインを満たすことを日本語では「果たす」といいます。
He doesn't meet his obligations.
[彼は義務を果たしていない]
一般的には、果たすという意味では「fulfill」を使う方が自然かと思います。
The company will meet your transportation costs.
この文は、あなたの支払うべき交通費のラインを会社が満たします、という意味です。
要するに交通費は自分で払わなくていいよってことです。
義務の中でも、こういった支払い義務に関するラインに対して「meet」を使って表現されることがたまにあります。
ただこれも「meet」よりかは「pay」や「cover」なんかで表現するのが一般的でしょう。
期限や期日といった条件に対しても「meet」が使われることがあります。
これらは「求められること」、「守るべきこと」の一種です。
期限や期日という辿り着くべきラインへ接触する。
日本語ではこれを「間に合う」といいますね。
Be sure to meet the deadline.
[必ず期限を守るように]
期日や期限に対して「meet」という動詞が使われるのは、割と一般的かと思います。
「間に合う」の他の言い方としては「in time for」という言い回しがあります。
We weren't in time for the deadline.
[我々は締め切りに間に合わなかった]
このように、「meet」は見えないラインを相手にしたとき、それに対して接触することを「満たす」という意味で捉えます。
人に対する接触を「出会う」としていた「meet」は、そこにはいません。
「meet」の本来の姿「接触」を知らないまま、「meet」=「出会う」と誤った認識をしていると、文章によっては意味をはき違えてしまう可能性もあります。
例えば日本語で「新しい義務に出会う」という言い方ができるからといって、これを英語にしようとして「meet」を使ってもうまくはいきません。
I meet new obligations.
これだと、新しい義務を果たす、という意味に勘違いされるかもしれません。
一般的に英語において「義務に対する接触」は、義務に出会うという意味ではなく、義務というラインを満たすこと、つまりは果たすことを意味します。
もし新しい義務に出会うというような意味を言いたいのであれば、
I have new obligations.
などの別の動詞を使う方がいいでしょう。
「meet」は非常に幅広い意味を持つ言葉です。
そんなときは「meet」の本来の意味「相手との距離が縮まって接触する」という基本に立ち返って、物理的な接触なのか、対人関係上の接触なのか、概念上の接触なのか、よくよく考えてみるといいでしょう。