「meet」は、対象との距離を縮めて接触するという意味を持ちます。
非常に幅広い意味なので、いろんな使われ方をします。
一般的によく知られている「出会う」という意味は、「meet」のほんの一面にしか過ぎません。
「meet」という英単語は、人と人との接触を対人関係における接触と捉えます。
そのため「meet」は「対面する」という意味を持ちます。
しかし、対面と言っても色んな場合が考えられます。
初対面、すでに面識のある人との対面、偶然の対面、約束した上での対面、などなど。
本来「meet」はこれらどの場合にも対応しています。
しかし一つの動詞だけですべての意味を担当していると、少々ややこしい。
そこで自然と他の動詞と意味を住み分けるようになっていきました。
まず、接点を待たない相手への最初の接触、すわなち出会い、これはそのまま「meet」で表現します。
出会いを「meet」で表すのに対して、すでに接触済みの面識のある人との対面に他の動詞を使うことで、意味の区別がなされるようになっていきます。
そこで選ばれた動詞が「see」です。
「see」は本来見るという意味ですが、人を見るということはその人と対面しているともいえるわけですから、出会いの「meet」との使い分けとして、既に面識のある人との対面に「see」が使われるようになったわけです。
He often sees Diana on his way home.
[彼は家に帰る途中でよくダイアナに会います]
ただこの場合、ただ見かけるだけという意味の可能性もあります。
その辺は文脈から判断することになります。
面識のある人に会うことを表す「see」。
面識があるってことは知り合いってことで、ある程度関係性ができており、仲がいいということになります。
面識のある人が必ずしも全員仲がいいとは限りませんが、仲がいい人は必ず面識がある人のはずです。
なので「see」が意味する対面は、その裏に何となく「仲良くする」というニュアンスが含まれることがよくあります。
たとえば、男女の交際を「see」で表現したりもします。
Are you seeing anyone now?
[今誰かと付き合ってるんですか]
まだ接点のない人との初めての出会い、すでに面識のある人との二度目以降の対面、これらの意味の住み分けはこれでよしとして、次に、偶然の対面か約束した上での対面か、この住み分けはどうしたものか。
結論から言うと「meet」は、事前に取り決めた上での対面というニュアンスが優位に働くようになりました。
何故か。
それは接点のない人と出会うという現象が、どういったものか、という点に由来します。
たとえば、たまたま信号待ちで隣に居合わせただけの人と、それだけで出会ったといえるでしょうか。
普通は言えません。
出会ったというからには最低限会話が交わされていると考えるのが普通です。
そこでまず「meet」という言葉に「会話」というニュアンスが含まれるようになります。
さてそれで、たまたま信号待ちで隣に居合わせただけの人と会話をするでしょうか。
普通はしません。
初対面の人と会話をする環境というのは、普通誰かによって事前に取り決められた集いであることが多い。
例えば、入学式や入社式、結婚披露宴や誕生日パーティーなど。
そういった集いに参加したときに面識のない人と会話をしてようやく「meet」という現象が成立する。
このことから「meet」という単語は偶然の対面よりも、事前に取り決められた集い、それと会話、というそんなニュアンスが優位的になった。
もちろん「meet」で偶然の対面を表現することもできるんですが、住み分けとして、「run into」や「run across」、「bump into」などが思いがけない対面という意味で優先的に使われるようになりました。
I often run into Diana on my way home.
[帰り道でよくダイアナとバッタリ会う]
Who do you think I bumped into on my way home?
[帰り道で誰に出くわしたと思う?]
さて以上のような住み分けにより、解釈の仕方が幾分か楽にはなりました。
住み分けがなされた結果、「meet」という動詞は、接点のない人との最初の対面という意味と事前に取り決められた上での会話を含む対面という意味を優位的に持つようになりました。
しかしそれとて絶対ではありません。
面識のある人との対面に普通に「meet」が使われることもよくあります。
しかしその場合でも傾向はあります。
時間や場所など、どのようにして会うのかという状況について話し合うときは「meet」を使います。
また、どうやって会うのか、何故会うのかという状況や背景がしっかりしている場合、知人であっても「meet」が使われることがあります。
We will meet at the station next Wednesday.
[私たちは来週の水曜日に駅で会います]
こういった待ち合わせという点に文意の焦点が当てられている場合、割と普通に、面識の有る無しにかかわらず「meet」が使われる傾向にあります。
これは「meet」が優位的に持つ「事前に取り決めた上での対面」という意味合いに符号するからです。
ただそれでも、一応この文章を、私たちは来週の水曜日にバッタリと駅で出会うことになるでしょう、という風に解釈できなくもない。
少なくとも文法上は。
なのでここでも更なる住み分けがなされます。
偶然の対面ではなく、事前に取り決めた上での対面であることを明確に意味するべく「meet」の後に「up」を付けます。
偶然の対面というのが底に沈んでいるのに対し、事前に取り決めた上での対面というのは、それを上に持ち上げて対面している、この「up」はそんなイメージです。
個人的には、日本語の約束して会うという意味の「落ち合う」という言葉が、この「meet up」にしっくりくる気がします。
会った後にどこかに行くなり、何かをするなり、そんな感じがします。
Diana and I will meet up at the station tomorrow.
ここで一つ注意点。
「meet up」の「meet」は自動詞です。
そして「up」は「meet」を修飾する副詞です。
なので対面する相手に言及する場合は「with」が必要です。
I'll meet up with Diana at the station tomorrow.
自動詞の「meet」と他動詞の「meet」には違いがあります。
自動詞は共同主体型、もしくは下位次元共同型であり、他動詞は自視点主張型です。
共同主体型の自動詞の場合、複数の主体がともに「meet」という行為を作り上げているというニュアンスがあり、互いに取り決めた上で会っているという意味合いが強まります。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
共同主体型の「meet with」は、互いに取り決めた上での対面という意味合いが強い。
それ故に、別に「up」なしの「with」だけで、事前に取り決めた上での対面を意味することができます。
Next month, the Japanese Prime Minister will meet with the President of the United States.
[来月日本の総理大臣がアメリカの大統領と面会します]
「meet with」というのは正式な言い方でやや硬い表現です。
日本語でいうなら、面会、会合、面談、そんな感じのイメージですね。
「up」を使った方がラフな印象があります。
「meet」自体に事前に取り決められた集い、そして会話というニュアンスが強いということは、先ほど説明した通りです。
名詞化した「meeting」が集って話し合うこと、すなわち「会議」という意味で使われることがあるのは、そういった経緯からです。
また「meet」自体に事前に取り決められた集い、そして会話というニュアンスが強いことから、集いを意味する単語を主語にとって日本語でいう「開催」という意味を表現することもできます。
The committee meets once a month.
[委員会は月に一度開催されます]