引きこもり英語学習法

素人英語の学習ブログです。

間もないを意味する「hardly」

They had hardly taken their seats when the lights went out.
[彼らが席に着いて間もなく、照明が消えた]

この構文に初めて触れた人が、なんでこんな意味になるんだと疑問に思うのも無理はありません。

「ほとんど席に着いていない」っていうのが、「席に着いて時間がほとんど経っていない」ってことを表しているんです。

順を追って説明しましょう。

 

「hardly」という副詞は「ほとんどない」という否定の意味合いが強いので、準否定語と言われています。

しかしあくまでも、否定の意味合いが強いというだけで、完全に否定しているわけではないのです。

She hardly ever goes to the movies when she's feeling tired.
[彼女は疲れているときに映画を見に行くことはほどんどない]

まったくないとは言っていないので、裏を返せば見に行くことも稀にあるということです。

ちなみに「hardly」の後ろにある「ever」は否定の意味合いをより強めている役割をしており、この場合あってもなくても基本的な意味は大きくは変わりません。

「hardly」は否定の意味合いが強いものの、もともとの軸は肯定にあると言えます。

分かりやすいのが次の文章です。

 

I hardly ever smoke
[私は滅多にタバコを吸いません]

これはつまり、この人が喫煙者であることを意味しています。

非喫煙者ならばこんな言い方にはなりません。

「hardly」という言葉を使っていることが、この人が喫煙者であることを示しているわけです。

このことからも「hardly」が否定と見せかけて実は軸を肯定に置いているというのがお分かりいただけるかと思います。

つまり「hardly」は、厳密にいえば肯定ではあるんだけれど、否定的に言ったとしてもけして過言ではない、というそんなニュアンスを含んでいる言葉なんです。

 

さて、映画の例文にしろ喫煙の例文にしろ、これらはどちらもともに「頻度」に対して否定をしています。

その行為が行われる回数がほとんどない、という回数の少なさを示しているわけです。

しかし「hardly」は回数以外の面でも行為を否定することがあります。

それは、その行為を一応まあやってはいるが、完全にしっかりとやっているとは言い難いという意味の否定です。

つまり、その行為を行っている時間がとても短い場合、それはもはやもう「ほとんどやっていない」みたいなもんだ、という意味での否定です。

 

You were looking at that woman's butt earlier, weren't you?
[さっきあの人のお尻見てたでしょ?]

No, I hardly saw it.
[いや、ほとんど見ていない]

ほんの一瞬見ただけです。

コンマ何秒の世界です。

それってもはや見てないみたいなもんですよね。

彼女が怒るようなことでもない。

 

このように行為が行われている時間が短い場合、「hardly」を使ってその行為が「ほとんど行われていない」という具合に否定することがあります。

それはつまり、その行為が着手されてまだ間もない、という意味にもつながってきます。

 

We can't stop for coffee now, we've hardly started.
[ほとんど始めてないみたいなもんだ、まだ喫茶店に寄るわけにはいかない]

「始めた」と言い切れるほど時間が経っていない、という意味で「hardly」が使われています。

仕事や作業に取り掛かってはいるが、さっき始めたばかりだから「やっている」とは言い難い、もはやまだやってないとすら言える、そんな感じで「hardly」を使っているわけです。

 

たとえば、飲み会の席にまだ到着していない同僚から電話があって、「もう始まってる?」って聞かれたとしましょう。

がっつり始まってるなら「もう始まってるよ」って言えるど、始まって間もないと「いやほとんど始まってないみたいなもんだよ」とも言えるでしょう。

Have you started drinking yet?
[もう飲み始めてる?]

No, it's hardly started yet.
[いや、まだほとんど始まってない]

厳密にいうと始まってはいるんだけど、始まっていないも同然、始まってないにさも似たり、という意味の「hardly=ほどんどない」です。

 

このような理由から「hardly」がその行為が行われて「間もない」という意味で使われるわけです。

The movie had hardly started when I got to the cinema.
[私が映画館に着いたとき、その映画はほとんど始まっていなかった]

始まったと言い切れるほど時間が経過していなかった、要は、始まった直後だった、始まって間もなかった、という意味です。

主節の「映画が始まる」の方が過去完了の形で表現されているのは大過去といって、副詞節の「私が映画館に着く」よりもさらに過去の時制の話をしていることを表しています。

つまり時間の経過順に見てみると、映画が始まって、その後に私が映画館に着いた、という流れになります。

文法的にはこの二つの出来事の間には時間軸のずれがあるのですが、そのずれがほとんどない、もはや同時だったといても過言ではない、そんな意味合いを示しているのが「hardly」です。

I had hardly begun my new job when my boss asked me to do something else.
[私が新しい仕事を始めて間もなく、上司は私に別のことをするように言った]

 

このように「hardly」は「ほとんどない」から発展して「間もない」という意味でも使われます。

そしてこの行動の「間もなさ」を表す「hardly」は、行動の着手だけではなく、行動の完了に対しても同様に使われます。

I had hardly arrived at the party when I realized I had left my phone at home.
[パーティに到着して間もなく、私は家にケータイを忘れたことに気が付いた]

ケータイを家に忘れてきたと気が付いたとき、私はパーティにほとんど到着していないようなもんだった、という意味です。

つまり到着してからほとんど時間が経っていない、到着してないと言っていいくらいそれくらい「間もない」という意味です。

 

これらの文章は「hardly」が表す「間もない」という部分に意味の重点を置きたくなる表現なので、強調構文、つまり倒置で表現されることがよくあります。

Hardly had I finished my dinner when my friends called and asked me to meet them at the bar.
[夕食を食べ終えて間もなく、友人から電話がありバーで会おうと誘われた]

 

また似たような「hardly」の使い方としてこんな表現もあります。

Hardly an hour had passed since the surgery when the patient started showing signs of improvement.
[手術から一時間も経たずに、患者は回復の兆しを見せ始めた]

この「hardly」もやはり「時間がほとんど経過していない」というニュアンスを示しています。