「fight」という動詞はその性質上、行為の主体が必ず複数発生します。
一方が戦うとき、もう一方も戦うわけですから。
両者が同じ立場で「fight」という行為を成立させている。
こういった動詞のことを相互動詞といいます。
私は個人的に共同主体型の動詞と呼んでいます。
そしてこういった共同主体型の動詞の多くは自動詞になります。
なぜなら、複数存在する主体が互いに作用し合っているだけで、外に向けて何かにエネルギーを作用させているわけではないからです。
つまり行為の主体自体が主体自身に作用して状態を変化させているだけ、という自動詞の方程式が成り立つわけです。
たとえば「converse」という動詞は「談話をする」という意味です。
談話をするという行為が成立しているとき、その行為の主体は必ず複数存在することになります。
談話をする側される側、ではなく、対等な立場としての行為の主体が複数存在する。
その複数の主体間で言葉がやり取りされているという状態に重きを置いた表現で、主体以外の存在を必要としていない。
故に「converse」という動詞は目的語をとることができず、他動詞としての機能を持っていません。
純粋な自動詞のみの動詞ということです。
談話をするという状態に重きが置かれているので、何について談話したのかという内容は、ただの追加情報になります。
そのため、内容に言及する場合は前置詞を伴って後ろに置きます。
We were just conversing on the matter right now.
[我々は丁度今その事について談話をしていたところです]
この「converse」のもう少しカジュアルな言い回しが「talk」です。
硬い表現が少し軟化したくらいのもので、根本の原理は一緒です。
日本語でいうところの「談話をする」が「会話をする」あるいは「お話をする」に変わった感じです。
「会話をする」という行為の性質上、複数の主体が存在することになります。
その複数存在する主体間同士で双方向にエネルギーが流れているだけで、よそへとエネルギーを作用させているわけじゃないので自動詞。
We talked all night long.
[私たちは一晩中会話をした]
これは複数存在るする主体をまとめて主語にした表現ですが、これを分離させ、単体を主語において、残りを前置詞とともに修飾語として置くこともできます。
I talked with them late into the night.
[私は彼らと夜遅くまで会話をした]
この場合の前置詞に「with」ではなく「to」が使われることがよくある。
この「to」という前置詞が共同主体型自動詞「talk」の持つ双方向性を鈍らせます。
I need to talk to you.
[私はあなたと会話をする必要があります]
前置詞「to」によって、まるで主語の「I」から「you」へと一方的なエネルギーの流れを感じさせますが、共同主体型自動詞「talk」の影響を受け、この流れはあくまで双方向なものとなり、「you」に届いたエネルギーはすぐにまた主語の「I」へと帰ってくることが前提になっています。
「with」でも「to」でも特に意味は変わらないと思います。
ただし、「talk」の共同主体であっても、主体間でなんとなく話し手と聞き手に分かれるような状況において「with」を使うのは、ちょっと変に思われるかもしれません。
ただそれでも、基本は「talk」は共同主体型の自動詞であり、「I talk to you.」という文章において「I」も「you」も共に行為の主体であり、対象にはなり得ないということに変わりはありません。
「talk」がさらにもっとカジュアルになったニュアンスとして「chat」という動詞があります。
日本語でいうところの「会話をする」が「お喋りをする」になった感じですね。
これもやはり双方向のやり取り故、共同の主体という点において「converse」や「talk」と同じく自動詞となります。
I chatted to my friend on the phone for half an hour.
[私は友達と30分ほど電話でお喋りをしました]
「chat」のさらに砕けた言い回しとして「chatter」という動詞もあります。
これまでの動詞同様に共同主体型の自動詞です。
ニュアンスとしては「ペチャクチャ喋る」みたいな感じです。
名詞として「猿の鳴き声」や「機械のカタカタいう音」という意味もあることからわかるように、雑音とか、不要な音みたいな、ちょっとネガティブなニュアンスを感じます。
They chattered on and on.
[彼らはずっとペチャクチャお喋りしていた]