「utter」という動詞をご存じでしょうか。
「utter」というのは、口を使った「発する」という行為のことを言います。
何を発するのか。
この「何を」にあたる部分が「utter」という行為の対象になります。
口から発するのは「音」ですね。
なので音に類するものが「utter」という行為の対象、つもりは目的語となります。
He uttered a cry of joy.
[彼は歓喜の声を発しった]
場合によっては音以外のものを発することもあります。
She will utter a deep sigh.
[彼女は深いため息を発するでしょう]
口から発するものをただの音ではなく内容を伴った言葉に絞った場合は、それはもはや「発する」ではなく「言う」へと変わります。
すなわち「utter」から「say」へと変化します。
では、どんな事を言うのか。
この「どんな事を」にあたる部分が「say」という行為の対象になります。
そしてこの「どんな事を」っていう対象に対し、かなり微に入り細を穿ったところまで踏み込んでいる。
That節、疑問詞節、to不定詞など、いろんな形で具体的な内容を示し、「say」という行為の対象になる。
いわば漫画の吹き出しのようなイメージです。
「say」って動詞は、あの吹き出しが付属した動詞なんです。
吹き出しがあるんだからその中に発言の内容を入れなきゃいけない。
吹き出しの中に入れる内容が「say」の対象です。
He didn't say why he was so late.
[彼はどうしてそんなに遅れたのかを言わなかった]
場合によっては具体的に言った言葉をそのまま対象に取ることだってある。
The boy said, "Mom, I'm home".
[少年は「お母さん、ただいま」と言いました]
このように文章をそのまま対象に取ることができるというのが「say」のみが持つ最大の特徴です。
その一方でもちろん、ただの一般名詞が「say」の目的語になることもあります。
What do you say your name?
[お名前は何て言うんですか]
Before we start eating, let's say grace.
[食べ始めるに感謝の祈りの言葉を言いましょう]
代名詞が目的語になることもよくあります。
He just laughed and said nothing.
[彼はただ笑っただけで何も言わなかった]
Nobody says anything about this.
[このことについては誰も何も言わない]
このように「say」という動詞は発言の中身に重きを置き、そこに作用することで成立する他動詞です。
その一方で「誰に対して」言ったのかということは重要視されていない。
そのため相手に言及する場合は前置詞が必要になる。
I don't remember saying that to him.
[彼にそんなことを言った覚えはありません]
行為の対象というのは、「何をどうこうするのか」という直接的な対象の他に、「何に対して」あるいは「何に向かって」するのかという間接的な対象も存在しています。
この間接的な対象にすら重きを置いた言葉が「tell」です。
「tell」の本質は「伝える」です。
つまり伝える相手ありきの言葉なので、内容に加えて「何に対して」という間接目的語までもとることができます。
いわゆる第4文型を作る動詞です。
Let me tell him the truth.
[彼に真実を伝えるのは私にやらせてくれ]
伝える相手(間接的な対象)も伝える内容(直接的な対象)も「伝える」という行為を成立させるのに必要な存在であり、伝えるという行為の対象になります。
なので、どちらに対しても前置詞が要らない。
さて、では「speak」はどうなるのか。
「speak」の本質は「発話する」です。
口から言葉を発している状態に重きを置いた、状態変化動詞です。
つまり自動詞です。
「run」や「sleep」などと同じで、主語が何にも作用せずに自分で自ら発話している状態になる、そこに内容があるならあるでいいし、相手がいるならいるで別にいい、そんなことよりも主語が発話している状態になるということの方が重要、ってのが「speak」の本質です。
主語の状態変化に重きがあり、発話の内容も相手も関係ない。
漫画でいうと、吹き出しがついておらず、ただ一人で喋っている絵だけが描かれているのが「speak」って感じですね。
そのため、発言内容に言及するなら吹き出しを用意する必要があるし、相手に言及するなら相手を描くだけのスペースを確保する必要がある。
それらの役割を担っているのが前置詞です。
Kate spoke to us about her own past.
[ケイトは僕らに自身の過去について話してくれた]
具体的な内容に重きを置いていないとはいえ、発話をするには最低限言語は必要です。
なので「どんな言語で話すのか」ということには重きが置かれているんです。
そのため、言語に関しては目的語に取ることができます。
I heard she speaks three languages.
[彼女は3か国語喋るらしいです]
この場合でも、具体的な内容に触れておらず、主語が発話するにあって利用している言語に重きが置かれているだけなのがわかります。
ただそれでも、実際には「speak」も他動詞として内容を目的語に取ることはよくあります。
「speak a word(一言話す)」、「speak the truth(真実を話す)」、「speak my mind(自分の考えを話す)」などなど。
しかしこれらはすべて、具体性ということに関してはそこまで踏み込んでいないのも事実です。
具体的な内容に言及するときはやはり前置詞を伴うのが一般的と言えるでしょう。
「talk」という動詞は複数の主体が互いに作用しあっているだけで対象の存在を必要としない自動詞です。
詳しくはこちらの記事を参考に。