英語には否定疑問文なるものがあります(まあ日本語にもあるんですが)。
Didn't you buy it even though it was half price?
[半額なのに買わなかったんですか]
ちなみに「even though ~」で「~であるにもかかわらず」という意味を表します。
なぜ普通に「Did you buy it?」と言わないのか。
なぜ普通の肯定形の疑問文で質問せずに、「Didn't you buy it?」と否定形の疑問文で質問するのか。
それには理由があります。
それは話者の中にある「そうであって当然、肯定であって当然(この場合、買って当然)」という感覚が、否定形で質問せているのです。
つまり、話者の中にそうであって当然、肯定であって当然という感覚があるために、そうじゃないとわかったときに、驚きや疑念といった感情が生じ、それらの感情とともに、自分の中にある肯定の感覚を相手にぶつけるという意味で、否定形での質問にしているわけです。
「買ったんですか?」と肯定の形で聞かずに、「買わなかんですか?」という否定の形で尋ねるその裏には、「買ってしかるべきなのに」とか、「買えばよかったのに」などといった気持ちが含まれているわけです。
このように否定疑問文というのは、話者の中にある肯定の感覚を相手に押し付ける文章表現なわけです。
Have we met before?
これなら単純に、以前に会ったことがあるかどうかをただ相手に聞いているだけです。
しかしこれが否定疑問文になると…。
Haven't we met before?
こうなると、話者の中に「以前に会ったことがある」という肯定の感覚、肯定の可能性が存在していることを意味しています。
それを相手に押し付ける形で質問しているのが否定疑問文です。
前にどこかでお会いしてません?
って感じですね。
付加疑問文において、肯定文の後に否定形の疑問を添えるのも、まあいわばそういった理由からです。
You should have bought it, shouldn't you?
[あなたはそれを買うべきでした、そうじゃない?]
You felt that even at half the price it was still too expensive, didn't you?
[あなたは半額でもまだ高いと感じた、違う?]
このように、肯定の感覚があるからこそ、その感覚を否定の形にして相手に投げかけるという場面はよくあります。
たとえば、相手に何かしら自分の意見を提示して、それでも相手が決めあぐねていたり、あるいは提示した意見になびこうとしていたり、そういった反応を示す相手にこんな言葉を投げかけることがあります。
Isn't that right?
私の言ってること、正しくないですか?
否定疑問文にすることで「私の意見は正しい」という肯定の感覚を「正しいよね?」って感じで相手に押し付けているわけです。
会話でよく出てくる「Isn't it?」もそうです。
否定形で投げかけているということは、単純にそうであるかどうかを聞いているのではなく、自分の中にある「そうである」という肯定の気持ちを相手にぶつけているわけです。
それは正しいことでしょ?、肯定されてしかるべきことでしょ?っていう感覚です。
「Isn't it?」は補語もないので、もっというなら「だろ?」とか「でしょ?」に近い感じですね。